農業経営を次のステージに昇華させるには「信頼」と「手放し」がカギ。
おはようございます。ガンプラ制作していたシャア専用ザクⅡビックサイズモデルが完成したので妻に「次、ラジコン戦車ポチっていーい?」と聞いたら「自分の小遣いでやるならいいよ」と言質を取ったので思いっきり楽天でポチってしまった中二病真っ盛りメロンおじさんの寺坂祐一です。
■メロン産直農家に舵を切ってもう22年になる。
昔を振り返るとなんですが、農業に直販業務が加わると猛烈に忙しくなる。
「もうダメか…」つーぐらいに仕事が次から次へと降りかかってくる。
通常の農業生産+出荷の仕事に加えて、お客様対応、集客、直売所の運営、通販業務、スタッフ増の対応、人材マネジメント、労務管理、コンサルタントとの打ち合わせ、宅配便や段ボールメーカーなど関連業者さんと打ち合わせ、メール返信、電話対応、そしてクレーム対応。くわえてモンスタークレーマー対応、さらに加えて次々と仕掛けてくる詐欺への対応…。
体感的には3倍の忙しさだ(実際は1.3倍ぐらいの仕事増。)
飯・風呂以外の時間は早朝から夜までずーっと仕事・仕事・仕事―っ!となる。なった。
「自分の体があと2つ欲しいーっ!」
分身の術を身につけたい、と本気で思ったものである(笑)。
■「自分がやらなきゃ!」その思い込みが成長を止めるボトルネックの正体。
そう、この「自分がやらなきゃ!」という思い込みが自分を追い込んだのだ。
もちろん直販・産地直送をスタートアップしたときは全力でファイトするべきである。体力知力の限界まで出し切る熱意・情熱があるなら出来る。
だが、ある程度お客様がついて産直業務が増えてスタッフも増え、軌道に乗り始めたらその思い込み「自分がやなきゃ!」「自分が頑張れば!」を手放すタイミングに入る。
ここで手放せないと「社長の能力=売り上げ・利益」で止まる。
組織力を生かし個の持つ力を「目的・目標に向かって」発揮し複合的相乗効果でより大きな成果の果実を得る、ことは出来ない。
■農業経営を次のステージに昇華させるには「信頼」と「手放し」がカギ。
まず社長の頭を切り替え、大前提として「自分が出来ることは、相手にもきっと出来る」と信頼することである。
それでなければ、今自分が抱えている仕事を相手にお願いすること、手放すことは出来ない。
これを『自分が出来ることは、相手もきっと出来る!理論』と名付けます。
中小企業家同友会で学んでいたとき、ある社長が私にくれたアドバイス
「寺坂さん、社長が社員の仕事をとっちゃダメなんだよ」
8年前ぐらいかな、この言葉が痛烈に心に響いた。そう、その頃は私は頑張りまくってすべての業務に首を突っ込み仕事を抱えてアップアップしていたのである。
なるほど、私が社員さんやスタッフさんの活躍する場を奪っていたのか…。目からうろこが落ちる、とはこのことだ。
極論すれば「社長は外に出て学んだり遊んでいる方が、会社は成長する」みたいな感じか。
昔と違って私は今、専務(妻)を絶大に信頼している。
「すごい奥さんですね。スタッフを引き連れ現場を全部取りしきって仕事を回しちゃうんですね…。こんな奥さん、いませんよ!」
お世話になってる業者さんの担当者が農園に来たとき、私の妻の活躍ぶりを見て驚くことが度々あります。私は、
「あぁ…、仕事の組み立てからシフト管理、現場での作業の仕切りから教育まで全部やってくれるよ。俺、社長業だけ。ラクしてます(笑)」
「いろんな農家さんを回りますが、どこの奥さんもスタッフさんと一緒に作業している、旦那から指示された仕事だけをするスタッフのような感じなんです。寺坂さんのところはすごい、奥さんが完全に右腕じゃないですか」
「確かにうちの嫁さんはすごいよ。うーん、そうだな…そいうケース、きっと奥さんに能力があるとかないじゃなくて『旦那さんが奥さんを作業員にしている』んだよ。それが現実化しているだけじゃないかな…」
私の想像だけど、そう答えた。その人は
「あっ、そうかもしれない!そして旦那さんが「おれがやんなきゃ!」って仕事をいっぱい抱えてあたふたしてるんだ…」
実は、自分が昔そうだったので、その体験からエラそーに話しちゃいました!
■私が最近体験した「信頼と手放し」事例を2つ。
・メロン栽培の仕事が自分がいなくても進んでいく
「メロンだけは私が手がけなきゃ!難しい作物だしノウハウがいっぱいあるから」って思い込んでいた自分。この思い込み手放しました。
今では、専務(妻)と、今農場スタッフとして活躍しているNさんを筆頭に信頼してメロン栽培作業全般を任せているのですが、バッチリできてる。
私が先頭になってメロンに関わるよりも、良い苗が順調に育ち、メロンハウスもきれいに作業が進んでゴミ一つ落ちていなく、計画通りに作業が進んでいたりして(汗)。
『自分が出来ることは、相手もきっと出来る!理論』が『自分よりいい仕事してくれる理論』になりそうですわ。
・小屋作り、こそ!自分がやらなきゃ作れないだろ。
幻想でした。私が手がけなくても農場スタッフ4人で見事な小屋をなかなかの完成度で作り上げちゃった。
最初は電動インパクトも電気のこぎりも上手に使えなかったスタッフが、今では2棟目3棟目をテキパキとより正確に完成度高く作っているぐらいにして。すごい成長!!
小屋を作り始めの時「溶接だけは自分(私)しか出来ないから、やらなきゃな…」と思っていたけど、おっと!これが思い込みだ。信じて手放さなければ!
スタッフNさんに3日間かけ、溶接のやり方を順序立てて教えていくと・・・。器用なNさんはやっぱり出来るし。またもや『自分が出来ることは相手も出来る!理論』補完事例ですわ。
結局、小屋作り3棟は私が溶接する出番なく完成に向かっています。いまではスタッフさんの方が溶接上手かも・・・。
■ここでぶつかる心理的な壁
『自分じゃなくても、仕事は回る』
そうなるとコレ、社長にこの現実を突きつけられるのだ。これは意識的にも辛いことだし、自分の深層心理にも大きく影響してくる。
だって、いままで先頭に立ってどんな困難も課題も問題も難題も乗り越えて引っ張ってきた農業。
「この仕事だけは俺が!」
って気合い入れてより良いきれいな作業、良品質多収を目指して現場で汗をかいて頭にも汗をかいて頑張って頑張った分だけに、さらには何年も積み重ねてきたことだけに…。
自分じゃなくても仕事が進み作物が育っていく現実を目の当たりにすることになる。
確かに、自分の体と気持ちが楽になり、パートナーやスタッフの成長は嬉しいし大変喜ばしいこと、なのだが…。
それと同時に、喪失感、無価値感、寂しさ、虚無感にジワジワと犯されていく。
私はこのネガティブ感情を深層心理側に閉じ込めて辛くなったようだ。気づかずに深いところで静かにダメージを受けていた(ある人のアドバイスによって顕在化できた)。
「頑張りまくってきた大切な仕事」
であればあるほど、この寂しさに大きく包み込まれゆっくりと気持ちは沈んでいく。
例えば子供の頃、楽しく遊んで没頭していたガンプラ作り。親に急に取り上げられて「受験勉強しなさい!」みたいな喪失感、悲しさと同じハズ。
このネガディブナ一面にもしっかり向き合わなければ、受け止めなければ、感情をしっかり感じなければ仕事の手放しと信頼ができない。
無意識的に我慢しきれなくなって、理由は後付けでまた現場に頭を突っ込み指示を出して、スタッフ一緒に汗して心の安定を保とうとするだろう。
傍目から見ても「一生懸命働く経営者」と背中に書いてあり、誰も文句は言わない。
■この喪失感、寂しさをどう乗り越えるか?
自分がいなくても仕事は回る。組織は成長していく。という農園組織を自分は作れたんだ!と、自分を肯定しましょう。
この現実もしっかり受け止めて自分で自分を褒めてあげることが大事です。
そして、寂しさもしっかり感じること。
寂しさを感じて当然だよ。それだけ一生懸命にやってきたんだから。
次に、現実では【空いた時間】と【心の余裕】と【うちから湧き出るエネルギー】。これ貴重!
この3つを自分の人生ステージを更に上げるべく、ワクワクすること、楽しいこと、やりたいこと、成し遂げたいことに注げばいいのです。許し、ですね。
私の場合は、
・自らの体験、経験を次の世代へ循環を。毎週clubhouseで楽しく農業トークするチャレンジ。
・3冊目の出版構想に取り組む!
・ラジコン戦車を作って遊ぶ♪
にワクワクを感じて、この3つの新しいことに挑戦しています。楽しいわー。まさか48才になってこんなに楽しい人生になるとは思いませんでした。
専務と社員さんとスタッフさんみんなに感謝です!
■信頼して任せた仕事、失敗しちゃったらどうする?
1.自分がやっても失敗することある、と受け入れる。
2.「教え方悪くてゴメンね」と謝る。
3.作業手順ノウハウ伝達スキルをより高める!
そして、良い仕事をしてくれたときには、心から褒めて感謝の意を「言葉で」伝える。とっても大事です。相手が妻で恥ずかしくてもちゃんと言葉で伝える、大事です。
伝える、だけではなく、感謝の気持ちが伝わるレベルまで「誉めの達人」を一緒に目指していきましょう!
■自分自身が、農園の成長の“ボトルネック”にならないように。
今回は自分がドツボにハマったお話しでした。
特に深層心理レベルで、「自分しか出来ない」とおもっていた仕事がなくなる悲しみ、寂しさがあることにに気づくことが、大きなポイントでした。
今までに自己アイデンティティーを手放し、新しい自分になる!ことを自分に許す。
と言い換えることもできますね。
よし、48才メロンおじさんもニュータイプになれるのか?!今年も挑戦の年だな。
■経営者が取り組むべき1番大切な仕事とは。
時間と精神的余裕を確保したら、休む・遊ぶことも大切ですが、
『未来を見据えて取り組む“緊急ではないが重要な仕事”』
この第二象限の仕事に取り組み、事業成長を牽引していくことが大事だと意識しています。
では今日も一日、ポチったラジコン戦車が届くのをワクワクしながら、自分と自分の周囲の人がより一層豊かになるよう、自分の能力を発揮します!(^^)/
北海道・富良野からおいしいメロン・野菜を全国にお届けし、お客様に「おいしいっ」と喜んでほしい』を理念と据え、産地直送に取り組む農業を続けています。