『農業の法人化はしないほうがいい』
私が言うのもなんだけど、やってみた経験から来る持論です。

私、農業の法人化やりました。年商も億超えました。6次産業化にも取り組み野菜ドレッシングを製造販売しています。

メロンや野菜の産直で実績があります。そして、たくさん雇用を生みこの地域で農業を続けてます。

たまに地域の若い農業者の方から
「農業法人にしようと思っているんですけど…」たびたび相談受けます。どうして?

「これからは人手不足だし親も高齢になってきたので、法人化しないと生き残れないと思って…」

私の答えは2つ。
・一つは、法人化した体験から得た経験談として『法人化はやめた方が良い』

→その人が目指すところによるけど(広範囲にわたって、いろんな意味で)なおさら大変なことになる。

・2つめは、この本を読めば分かる、です。


【「農業を株式会社化する」という無理】内田樹さん、藤山浩さん 宇根豊さん、平川克美さん、養老孟司さん著

私が悶々としていた農業に対する長年の疑問に答えてくれた!スッキリ農業論。一気読みだった。

私が『農業の法人化はやめた方がいい』という理由は、たーくさんある。長くなるから省略するけど、ギュッと感覚で伝えると

農業の良さが失われていく。

そんな感覚があるからだ。抽象的で申し訳ない。効率化、生産性アップ、働き方改革、などなど…、おいおい農業じゃ限界あるだろ、って感じる。

家族経営だと利益でるのに、法人化したら利益でないの!!借金増えるのーっ。なんでーっ!?

で、この本読んですんごーく納得した。私は農業を法人化して7年目。頑張ってきました!だから、このタイトルはキツイ!読み始めるキツイ-。

「おいおい、もう株式会社にしちゃったよ…」
どーしよう…、読みたくないなぁ…。からのスタートでした。傷口をもう一回開く感じかなぁ。イタイ。

読むとタイトル通りの内容で、自然観点、社会経済、世界経済、地球の仕組み、百姓と自然、テーマは幅広く、実際私も農業を土の上でやっているので、納得することだらけでした。

詳しくは本著を読んで欲しいのですが、チェックしたポイントだけ列挙しますね。フセン、本の端折りまくり、アンダーライン箇所もいっぱいになりましたー。
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■農業というのはそれ自体が「弱い」ものだということをどうも「強い農業」を語る人たちには理解できないようです。(中略)農業と経済成長は無関係です。9p

→そうなんです!台風、大雨、干ばつ、熱い、寒い、地震、噴火…。自然の影響を直撃で受けまくり。作物の収穫量MAX値は種のDNAで決定されていて「今年は3倍採れたわ」は、ありえない。自然要因と技術力でどれだけ外的要因から作物をフォローできるかの減算方式で収穫量・収入が決まる。ほんと弱い…。

■農業の存在理由は人間を飢えから守ることです。11p
→お金が絡むし、今は生産過剰なのでどうしても忘れがち。食料がないと暴動が起きます。平成6年の米不足…すごかった事を、思い出します。

■農業を営利目的でやった場合、たぶん失敗する。それは、農業という産業が成立するためには、その前段として膨大な「不払い労働」が存在するからです。それなしでは農業そのものが成り立たない仕事がある。28p

→わかるー!20代の頃からずーっと思っていた。友人は会社に就職し、働いた時間だけ給与をもらえる。
自分は、草刈りしても、石拾いしても、草取りしても、堆肥撒いても緑肥育てても、農業用水の土さらいに参加しても、数ある夜の会合に長時間参加しても、それは「無給」なのだ。

すごい時間掛かっているのに、そう「不払い労働」が多い。だが地域共同社会を守るのにはそれが大事なこと。でも、すごいハンデ戦に感じていた。
ちなみに農業法人にした私、社員・スタッフさんが「不払い労働」しても、労働時間に対して資本主義社会が決めた賃金を支払い続けなければなりません。

■「生きるものが相手」「天地自然という共同体が母体」「人間の欲望に合わせて肥大するものではない」120p

→まさにそう。自分も経営者なので、生産量と売上げに目がいくのですが、この3つは絶対なのであります。むむむ…。

■仕入れる部分が自然からの贈与である場合、定常的なやりとりから離陸することはできないのです。たとえば農業の場合も、土、水、空気と、全て自然の贈与ですから。

→太陽光もそうですよね。自然からの贈与をうけて生産している農業。ありがたい限りです。ですので、ドカーンと拡大生産することができない。ほんと大変…。

■農業は「非効率」であるがゆえに雇用を生み出し、同時に人間の市民的成熟を促す。集団での事業ですから、成員たちは相互扶助・壮悟支援のマインドを持たなければならない。

→先祖が北海道に入植した大正時代から、そうだったんだろうなぁ…。お祭りとかもしっかり続けているのは,こういう所なんだと。

あと、経験談ですが、お客様がどんどん増えてきた時、それに合わせてどんどんメロン栽培面積を増やしていきましたが、機械化できず効率は上がらず雇用がドンドン増えて、ミスも増えて効率落ちたような…感覚があります。非効率…わかる…。

やっぱり北海道は機械化農業かなぁ。社会的役割を効率上げながら果たしているように感じます。
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と、農業の在り方について、いろいろ書かれていて考えさせられる一冊でした。

あと、農業の株式会社化する無理についていろんな視点で書かれていますが、『農業の良さ、すばらしさ』についてもたーっぷりかかれているので、この部分にも納得です。

・「もう、法人化しちゃったよ…」という方は、読まない方がいいかも…(汗)。

・「法人化した方が良いのかな?」そう考えている人は、この本読んだ後に、もう一度自分に問いかけてみましょう。判断の一助になるハズ。

・「農業のすばらしさって、どこにあるのかな?」と考えている人、この本にいっぱい答えが書いてあります-。読んで欲しい!そして農業を満喫して欲しいです。

農業は私の天職。
メロンを育てて産地直送する農業はやりがいに満ちています。難易度高いだけに…。

この本を読んで、よりいっそう農業の大切さ、すばらしさを噛み締めました。残念ながらこれから雪に閉ざされた農閑期へ。

早く春が来ないかなっ!という気分アップです。自然と人一体になれる仕事です、ほんと最幸ですよ-。

農業に正解はありません。
農業に、これが正しい、はありません。
あなたにとって、一番やりがいを感じる農業を実現して、この限りある命を燃やし続けて生きましょう。