「黒字なんですが、資金繰りが厳しいんです…」



農業者の方と話していると、よく聞く言葉です。借金にはよい借金と悪い借金があるし、「設備投資資金の借入」と「運転資金の借入」は全く違うことを知っていますか?

おはようございます。写真は富山講演に行ったとき連れて行ってもらった人生初の薬膳料理!魚とお肉がない!!のにおいしい♪ビックリ感激でした。

講演後の懇親会ではお寿司屋さんでブリづくし、しらエビの軍艦巻きに大感動し、富山の食の豊かさに惚れ惚れしてしまったメロンおじさん寺坂祐一です。

■最近農家さんの「資金繰りが厳しい」という話をよく聞くんですけど、どうやら「運転資金の借り入れ」という発想・概念が全くないんです。よく考えたら僕も昔そうでした😅

農業の歴史的に、盆暮れ払いだったから?
黒字なのに資金繰りが厳しい。
この経営状態が続くということは

「借金=悪いこと=返さなきゃいけない!」
という思い込みが潜んでいそうです。

■実は寺坂農園、結構な借入額があるんです。正確な数字は言わないけど、あなたが聞いたらちょっとビックリするぐらいお金を借りています。

でも大丈夫👍
借入は設備投資資金ではなく、すべて「運転資金の借入」なんです。

なので潤沢なキャッシュを保有しつつお金をグルグル回して、営農・直販・経営に集中しています。期中の資金繰りの心配はほぼありません。

「黒字なんですが、資金繰りが厳しくて…」

と相談された場合は、銀行に相談しに行き「運転資金をいくらまで借りられますか?」聞いてください、ってアドバイスしています。

決算が黒字で利益が出ていても、生活費は毎月出ていきますし収穫の収入があるまで種・肥料・農薬・諸材料・人件費など経費がどんどん出ていきます。

収穫期が来る前に資金繰りが厳しくなるのは当然です。(今回は設備投資借入のことは置いておきます。キャッシュフローの話のみ)

実は、銀行さんは運転資金を貸したがらない傾向はあります。決算書が良くないとですね。設備投資資金なら喜んで貸してくれる傾向があるのは事実です。

当農園も「設備投資資金ならいくらでも…」と銀行さんに言われますが、もう規模拡大路線ではない現状維持路線経営しているので、農地購入や設備投資の借入は必要ないです。

ですが運転資金は必要です。運転資金は血液でありガソリンです。キャッシュがショートしたときが倒産するとき。赤字でも黒字でもキャッシュが潤沢にあれば潰れることはありません。

ですので私は運転資金の金利負担は「保険料みたいなもの!」と必要経費だと思っています。

もし、私が「借金は悪」だと思い込み、「金利がもったいない」「借金は返さなければならい」思ってキャッシュがあるから運転資金を全額返済すると・・・、今年の5月メロン収穫前にはキャッシュショートして廃業ですね😅

なので、運転資金はしっかり借ります。がっつり借ります。MAXまで借ります。決算書がよいと金利が低くなるので、遠慮無く限界まで借ります。その方が経営安定度が高まるからです。

※イメージをつかんで欲しいので極端に書きましたが、不必要な分まで借りる必要はありません。

■私が農家さんに説明するのは

・運転資金は車のガソリンと同じで、燃料切れになりそうなときに2000円分しかガソリン入れない。だからいつも燃料切れにおびえて運転している。

・黒字の決算書を作る(←これ大事)。そして一年間の資金繰り表を作る。そこで銀行に「運転資金を最大で借りる交渉をする」。運転資金を借り入れできれば燃料が満タンになる。

・経費を払い売上げを上げる。運転資金の返済も続けていく。翌期の決算時には燃料が半分になる。そこでまた運転資金を最大で借りて満タンにする。

・以下繰り返し。運転資金は返した分だけまた借りる。黒字決算だと金利は安くなる。もっと言うなら「運転資金は借り続けて返しきってはいけない」。

これだと黒字倒産もないですし、資金繰りも苦しくなく安心して農業経営できるハズです。

盆暮れ払いの歴史があるから、運転資金借り入れの概念がない農家さんが多いのでしょうかね…。あと概算金もらったりとか(これも大事)。

■ザックリした具体例を(簡略化するため金利と設備投資資金の返済は考慮しない)

(例)売上げ2000万円。利益(所得)500万円の稲作農家だとしましょう。収入は10月に一回のみです。1月に現金は手元に500万あるとします。

・12月に決算、1月に黒字の決算書を持って銀行に行き500万の運転資金を借りる。返済は5年で11月に100万ずつ返済する。(本当は1000万借りたいところ!)

・運転資金で借りた500万+前年利益の500万、合計1000万のお金で生活しながら農業をつづける。

・10月に収穫出荷した米の売上げ入金が2000万入る。経費をすべて払う。このとき手元に残ったキャッシュは約2200万とする。

・翌月11月、運転資金の返済100万円があるが、キャッシュが潤沢なので大丈夫。残りキャッシュは1900万ぐらいかな。

・次の決算を迎えて黒字の決算書を作る。1月頃の手元のキャッシュは1100万。ここでまた運転資金を500万借りる。

・以下繰り返し・・・です。

ポイントは「運転資金は借り続ける」です。返したら借りる。借り続ける。金利は安いもの!保険料みたいなもの!と考えます。

ちなみに上記の例で、金利がもったいなからと「運転資金を全額一括返済」すると、収穫期直前頃に資金繰りに苦しむことになるでしょう。

あと、運転資金については損益計算書で考えるのではなく、貸借対照表(B/S思考)で考えることも大事です。
●現金が増える/運転資金借入が増える
悪いことは何もないです。

まとめ。
・借金は悪ではない。
・借金でも「設備投資」と「運転資金」は別である。
・経営においてお金はガソリンであり血液である。

・規模拡大局面だと、なおさら運転資金が必要になってきます。
・運転資金は返したらまた借りる。
・極論言うと「運転資金は返してはいけない」

運転資金借入のメリット
・資金繰りの心配から解放される
・心の平穏レベルがハンパない(笑
・栽培、経営に集中できる

・不測の事態にあってもキャッシュがあれば冷静に判断・行動できる(保険的な役割がある)
・運転資金の借入と返済を繰り返していくと、銀行からの信用度がアップする。他の借入もしやすくなります。

運転資金借入のデメリット
・キャッシュがあるので勘違いして使わないこと!(これが一番大事で難しいところ)自制心大事。
・運転資金で機械とか買ったらアウトだよ。
・運転資金も借金だから、やっぱり返済プレッシャーは感じるよね。
・金利負担がある(経費になるけど)

ほい、ザックリですが運転資金借りれることの大切さを長々と語らせていただきました。

私もまだまだ勉強中の身でして、この投稿を会計や経営の専門家が読んだら、あちこち問題のある運転資金借り入れの話だと思います。ご指摘・ご指導いただけるのでしたらぜひ、コメントください。勉強になりますm(_ _)m

今日は「設備投資資金の借入」と「運転資金の借入」は全く違う、というお話でした。

#設備投資資金の借入については4月に発売される本の中で
#0から始める稼ぐ農業かならず知っておきたいこと1000万
#最後にちゃんと本の宣伝するボクはエラい

では今日も一日、笑顔で元気に!弥栄っ(^^)/