北海道中富良野町の寺坂農園
が作る富良野メロンはなぜ美味しいのか…。

この連載は寺坂農園の富良野メロン作りの序盤(土づくりや苗作りなど)を紹介した
連載1 最高の富良野メロンづくり~寺坂農園
の続編です。
ここからは、まだまだ小さなメロン苗をどうやって育てるか。
そのこだわりを紹介していきます。

富良野メロン

なお、寺坂農園のメロン通販専用ページはこちらです。
http://furano-melon.jp/products/melon/

寺坂農園は、メロンなどの直販・通販で年商1億円を超えています。
そのダイレクト・マーケティングの取組を紹介した代表寺坂祐一の著書
「直販・通販で稼ぐ!年商1億円農家 お客様と直接つながる最強の農業経営」(同文舘出版)や、
facebook、全国各地での講演活動などで全国の方に寺坂農園を知っていた方も多いと思います。

しかし、寺坂農園の根幹はあくまで、「美味しい富良野メロンを育てること」。
早速、メロン栽培の秘密をご紹介していきます。

●ミツバチさんがメロン栽培に欠かせません。

ぶんブンぶん♪ハチが飛ぶぅ~♪

ミツバチ

交配用ミツバチが、ゆうパックで届きました。
一番早いメロンは、もうすぐ開花期。
10節以降の伸びた孫ツルにメロンの実を着果させますが、
雄花から雌花に花粉を運ぶのがミツバチの役割です。

ビニールハウス内にセットし、フタをスライドさせて開けると
出てくる♪出てくる♪
かわいいミツバチ達が。

大活躍してもらいましょう♪
エサの『砂糖水』を与えると
とっても元気に飛んでくれます。
メロン栽培にミツバチは絶対必要。
頼みますよ~。

●メロンの雌花、ここに開花宣言いたします

4月24日。咲いたぁ~♪咲いたぁ~♪メロンの花がぁ~♪(^o^)
メロンの雌花が開花!
生育はとても順調。健康体です。
草勢、葉の大きさ、葉の色も良し!
いい雌花が咲きました~。

メロン花 開花

あとはミツバチ君の働きと、いい天気が続くことを願って(^∧^)
初収穫は6月12日の予定です。
これからメロンが成って大きくなっていくのがワクワクです。

●ガス害による生育不良が一部発生

4月26日です。メロンのハウスは22棟が順調に育っていますが、
1棟だけ非常に生育の悪いハウスが発生してしまいました。
『ガス害』が発生し、根がやられてしまって、生育不良です。
かなり気をつけているのですが、しばらくぶりにまたやっちまいました。

メロン ガス害

ガス害とは、土の中にある未分解の有機物が
地温の向上と共に微生物による分解が一気に進むため、
亜硝酸ガスが発生し、根が傷んで葉が脱色し、生育不良となる状態です。

子ヅルの新芽も、伸びてきません。
天気がいいと、萎れます…。
私の気分も萎れます…(*_*)
原因は、昨年秋に耕し込んだ緑肥、エン麦が未分解だったため。

昨年の秋、雨が多く水分の多い土の状態で
トラクターで耕し込んだため、土壌中が酸素不足・還元状態となり
有機物(エン麦・ヒマワリ)の分解が進まいないままに雪解け・春を迎えました。

そこにボカシ肥(これも有機物)を投入して耕し、全面マルチシートをはる。
そして、植え穴を開けて、メロンを植えます。
天気が良くなり、太陽光が照り土が一気に暖まると・・・・

分解ガス(亜硝酸ガス)が発生し
そのガスが植え穴に集中し、メロンがやられてしまいます…(T_T)

こうなると『天気がいい』

『ガス害発生で生育が悪くなる』

『曇りや雨の天気が続く』

『ガスの発生が減り生育が良くなる』

という、矛盾した状況に。そのつらさを私の表情で表現しました。

メロンガス害 意気消沈

対策としては…
・有機物の分解が収まるの待つ。
・栄養剤(薄い液肥)を株元に灌注。
・栄養剤を葉面散布する。
(根から養分が据えないため)
・全面被覆しているマルチシートのメロン通路部分をめくってガス抜きする。
・ひどく傷んでいる苗は植え替えする。

頑張ってくれぇぇ~!!

心から叫んでいます。
昨年秋のちょっと無理した作業が、翌年春に大きな悪影響になる。

農業は技術。
そして永遠と続く適期適作業の積み重ねが、理想とする生育・収穫に結びつく。
あらためて身にしみました。

●メロンの赤ちゃん誕生(生育中期に突入)

4月28日、メロンの着果確認ができました。
これで生育中期、一安心。
ほっと胸をなで下ろしています。

メロン着果 赤ちゃん

メロン生産農家にとって、とっても恐ろしいことなんですが…
『着果しない』こと、あるんですよ~。

肥料が効きすぎたりして、メロンの樹が強すぎると、花が飛んで着果しません。
元気なので子作りしないんです(-_-;)

逆に、メロンの樹が弱すぎると…
「子供を作ってる場合じゃない!」とメロンが判断し、花が『死に花』に。
メロンを「狙った節位10~15節」に着果させるって、技術がいるのです。
ちょうど良い樹勢に持って行くのです。

実は今回・・・この一番初めに植えた6番ハウス。
初期生育が良すぎました(^^;)
ワタシ、メロン作り上手ですから。

葉が大きく下にたれ気味。
ツル先も力強く立ち上がり、いい気分で満足していたのですが…
最初の花が着果しない(>_<)
花がしぼむと、子房が膨らまずにそのまま枯れていくのです。

これはマズいっ!!
あわてて、ツルの先端をピンセットでつまみ取る摘心作業を。
そしてぐんぐん伸びる孫ツルの整枝作業に入ってもらいました。

成長点がつまみ取られるため、栄養成長ホルモンが分泌されず
これで生殖成長に切り替わります。
子作りモードに転換されるのです。
2日後、狙った通りに次々と着果しました。
危なかった-!!

メロンの玉が成らずに、メロンのツルだらけのボーボーに
なるところでした。(もちろん収穫はなし)

10~15節に着果しない場合、もっと高節位の16節以上に成らす事も出来るのですが・・・
たいてい変形果となり、ネットも悪く低糖度のメロンになりがちです。
ツル整理作業も大変だし、いいこと無し!

危なかったぁ~。過去の失敗が脳裏をよぎります(-_-;)

メロン畑を見ると、かわいいメロンの赤ちゃんがたくさん成っていて、うれしいぞ!
メロンの赤ちゃんは、ふわふわの毛に包まれています。

これから毎日みるみると大きくなっています。

今日はお水をあげようっと。

●メロンに水をあげましょう!

4月29日です。メロンの実。大きくなぁ~れ、大きくなぁ~れ♪
昨日は初の灌水作業。
着果したメロンの肥大を促します。

昨日、着果確認した6番ハウス。
かわいい赤ちゃんメロンがたくさんです。
太陽がサンサンと照っていたので灌水(水やり作業)です。
灌水は、マルチシートの下に2本敷設してある“灌水チューブ”に農業用水を流し込んで行います。

灌水チューブ

灌水チューブは、等間隔に穴が空いていて、そこからピューッと水が出ます。
写真で確認できるかな…

20分間灌水をしました。
土の乾き具合、メロンの樹勢、朝見たときの葉水の上がり方、葉の色、生育ステージを見て…
総合的に判断して、勘で決めます。
今までの経験をベースに。

寺坂農園のメロン畑のクセみたいなものもあるんです。
乾きやすかったり、生育が良くなる畑だったり後半生育がバテる畑だったり…。
この辺はマニュアル化できない農業のメロン栽培のおもしろいところ!

灌水の目的は…
灌水することによって、肥料が効いてメロンの実が大きくなるのを促します。
この灌水タイミング、とても大事。
天気が良い日じゃないと、冷たい雪解け水で地温が低下し、メロンにダメージを与えてしまいます。

さぁ、あとは温度管理に気をつけて、メロンのみが大きくなるのをワクワクしながら見守ります(^^)

ギフトやプレゼント、お中元のご注文が多いので、大きくて甘いメロンを収穫し、通販でお届けしたいのですp(^-^)q

●メロンの結果枝(成りヅル・孫ヅル)の 整枝作業

5月1日になりました。
メロン栽培で一番ややこしい作業は、メロンの結果枝(成りヅル・孫ヅル)の整枝作業です。

整枝作業4回目を動画で解説しました。
メロン果実のアンテナ部分を残し、小さな芽をかき取って、
メロンの実に栄養転流を集中させます。
昔の人は、よくこの整枝技術、栽培技術体系を編みだしたものだとほんと感心します。

私やベテランスタッフは、もう見るだけで
無意識にチョンチョンとツル取り・芽かきが作業ができますが
新人スタッフはあっちこっちに伸びる孫ヅルを見て、
「?!」
と混乱します。
丁寧に順番どおりに説明し、間違えないように作業をしなきゃ!

メロンの果実周辺の大切な作業です。
いろんな整枝作業がある中でも、これが一番時間のかかる作業です。

メロンの成りヅル。
ハウス1棟300本の苗が植えてあり、一株から子ヅルが2本伸びて、子ヅル1本に5本の結果枝があるので…
300苗✕子ヅル2本✕5本の結果枝=
わっ!3000本も整枝するんだ。

たくさんのスタッフがメロン畑で整枝作業を頑張ってくれます。
これからこの作業が続きますね!

●着果した雌花が膨らみ、 ドンドン大きく

5月3日です。メロンが赤ちゃん→子供になりました!
ピンポン球くらいの大きさに。ワクワクします!
着果した雌花が膨らみ、ドンドン大きくなってきました(^^)/
生育は順調、葉色も樹勢もOK。

メロン子供

子供のメロンがもう少し大きくなったら摘果作業です。

●強風の恐ろしさ

5月9日です。昨日は強風に参りました。
ビニールハウス33棟の施設園芸農家には、精神的にもキツかったなぁ~。(>_<)ツカレタビー

一日中猛烈な西風にさらされて、ハウスの見回り、ハウスサイドの開閉、
などなどに、神経をすり減らしました。
全道的に風が強く、農業被害が多く出たみたいですね。

当農園では、ビニールハウスが飛ばされるまでの被害はなく、助かりました。
1時間に一回ペースで圃場全体を見回りしていたのですが…

1:35。私の携帯が鳴る。

( ̄□ ̄;)ハッ

メロン畑を耕しているハズのスタッフ北島さんからだ。

イヤな予感がする(-_-;)

「社長ぉ~、いま…19番のハウスにいるんですけど…」

おいっ!そこで話を止めるなっ!(汗)

ハウスが飛ばされそうなのか?
もしくはメロンが焼けたとか・・・?不安が膨らむ。

覚悟を決めるしかない。

「どうした?なにがあった??」
「えーっと、どう表現したらいいか…トンネルが飛んだ、というか、苗が抜けた、というか・・・」

「今すぐ行くっ!!」

なっにぃぃぃ~!!
一緒に作業していた新人スタッフぶんちゃんにも
「行くぞっ」と声をかけ
一緒に19番ハウスに急行しました。

よし、とりあえずビニールハウスが閉じてメロンが焼けて全滅とか、
ハウス自体が飛ばされて悲惨、とかではない、大丈夫だ。

最悪な事態ではない事がわかったが、何が起きているのかドキドキものだ。
19番ハウスに到着してみると…

一部、10mほどのトンネルビニールが飛ばされて落ちて、メロンが3本抜けて、萎れている。

強風でメロン萎れ

強風がビニールハウス内に吹き込み
トンネルビニールがまくられて飛び
地面に張ったマルチシートがバタバタと波打ち、メロンが抜けている。

アララ…(-_-;)

メロンのツルを外側に向けて誘引しているのが、
ひっくり返って反対になっている。

「よかったー、3本で済んだか。よしっ、トンネルを3人で直そう」

ふぅ~(^o^) この程度で済んで良かった。
それぐらい風が強かった。
抜けた3本は、もうしゃーない。

ビニールハウスのサイド換気。
開けなきゃ中が暑くて大変だし、開けたら風が吹き込んでてんやわんや。
この加減がメロン栽培管理能力なのだ。
神経すり減るわ~。

今朝は無風。平穏な天候に感謝(^∧^)
でも油断ならんよ、ヒューマンエラーでハウス換気が失敗したら、全滅につながるから…
昨日の事件をお伝えしました。モウカンベンシテ~

●メロンの皿敷作業!

メロンが毎日大きくなってきます。
5月11日はメロンの皿敷作業です。
これがなかなか、腰の痛い作業なのだ。
人海戦術でドンドンいきますよ~。

メロン皿引き作業

メロンの肥大期が終わり、硬化期に入りました。
文字通り“メロンの表面が硬くなる”生育ステージなのです。

メロンを指先で弾きコンコンしてみると…
3日前の肥大期だと「コンコン」柔らかい音がします。
今の硬化期だと「カンカンッ」硬い音がします。
硬化期に入ったサインです(^_-) この時期、メロンの表面が硬くなる。
次にひび割れが始まり、ネット(編み目)が発生してきます。

その前にこの『皿敷き作業』このタイミングを逃すと、
ネットが粗くなったり汚くなったり、美しいメロンにはなりません。

メロン硬化期

メロンのおへそ(下)についてる枯れた花びらをこすり落とし
一個ずつ皿を敷いてメロンを立てます。
メロンの生育を見て心配なのが…
ちょっと形が丸すぎる。
もうちょっと縦長な楕円形の方が、将来、形の良いメロンに仕上がります。

今でこの形だと・・・すこし横太り…なメロンになりそう!

メタボ気味の社長(ワタシ)
ビール腹に似なくてもいいぞ!!

あぁ・・・ワタシの心配は尽きません・・・(-_-;)

●メロンのひび割れ(縦ネット形成期)

5月15日。一番早い6番ハウスでメロンが割れてきました。
メロンの硬化期が過ぎて縦ネット形成期、に入っています。

メロン縦ネット形成期

メロンの表面が硬くなる。
でも、メロン自体は肥大し続ける。
すると、表面が割れてきます。
この割れ目が“カサブタ”のように盛り上がると、メロンの美しい網目模様に仕上がります。

最初、縦に割れてくるんです。
だから、『縦ネット形成期』なんです。
あと3日ぐらいしたら、今度は横の編み目が発生してきます。
『横ネット形成期』といいます。

今の『縦ネット形成期』で大切な栽培管理のポイントは、
・水をあげない。
・温度を上げすぎない(30度前後)。
・寒くさせすぎない。
です。

ここで灌水すると、縦のネットが大きく割れてしまいます。
粗いネットになって、それはもう悲惨です…(>_<)
温度を上げすぎると、メロンの表面にブチブチができるし、メロンの樹自体が弱ってしまいます。

寒くさせすぎると、メロンの表面が硬くなるので
これまたネットが粗く割れてしまいます。
ここがいい案配になるように、土壌水分、気温、湿度管理を続けているところです。

メロン農家の腕の見せ所ですね!
毎日の積み重ねが、甘くて大きくて美しいメロンの収穫につながってきます。
縦ネット形成期のお話でした。

●水やりの手間・・・でも嬉しい!

「あのぉ~、21番ハウスのメロン、元気ないように見えるんですけど…」

「おぉ~っと、今、見に行くわっ!」
自転車こぎまくって現場へ急行。

ぐわぁぁぁ~!しおれてるではないですかぁぁ~(*o*)
それまでぐずついた天気が続き、メロンには良くない。
良くないのさ。「太陽さん、照ってくれぇぇ」(>人<;)

私の願いが通じたね。
いきなり暖気+サンサンと照る太陽。
めっちゃ晴れて大喜びな私。ヤッホー

したっけ、11時頃にその日の見回り係、
スタッフ田村さんから冒頭の報告が。
2日前に植えたメロンの苗と、1週間前に植えたメロンの苗が、クタァ~っと、しおれています。

メロン萎れ 水やり

これはマズいっ!このままだと葉っぱがマルチシートの熱で焼けて枯れます。

しかも「植え傷み」になる。
根も弱って初期生育が悪くなり、生育がバラバラになります。
こうなると大変っ!

ふっふっふ。
しかしこれは想定内。
タンクに水、ポンプに灌水設備。
準備はしていましたよ(^_^)v
体感温度35度越えのビニールハウス内、ホースを引っ張って一株ずつ水やり開始です。

専務が水やり2棟やって…1棟100~120mあるから30分はかかる。
昼は私が交代。ドンドン苗がしおれていくので、昼休みも交代で水やりです。

「ハワイに行かなくていいな!」っていうぐらい快晴で暑かったぁ(^^;)
最後は母に交代してもらって、私がお昼ご飯を食べたのは2時頃に。
全部で6棟の水やりでした。

メロン水やり

翌日も快晴!!
昼から水やり開始。手間かかるわ~(笑)。
メロン苗が畑に根付く(活着)するまで、この作業が繰り返されます。

でも、天気がいいって良いことなのだ。
このメロン達は7月25日頃収穫予定の生育ステージです。

ビニールハウス内の暑い中、メロン作業スタッフみんな、整枝作業に頑張っています。

露地のアスパラガスもドカーンと出てきました!
ヤッホォー(^o^)いきなり総力戦突入の寺坂農園です。

メロンはアフリカ、あるいは中央アジアなどが原産と言われる
高温での栽培に適した作物です。
しかし、寺坂農園は北海道のど真ん中。
四季の変化や、昼夜の寒暖差の大きな中富良野町で、ハウス栽培でメロンを育てています。
その栽培は、温度管理だけをとっても
「寝ている赤ちゃんの肌掛け布団の様子を見るような感じ」
と言われるほど、大変慎重な栽培を必要とします。
そして、昼夜の寒暖差の大きさが、このあと、メロンの甘さに大きく貢献してくれます。

いよいよ次回、連載3は収穫まで一気に紹介します。

寺坂農園のメロン作り総集編
連載1 最高の富良野メロンづくり~寺坂農園
連載2 寺坂農園 おいしい富良野メロンの秘密
連載3 北海道で最高のメロンを作るために~寺坂農園